法人化のメリット・デメリット |
会社にしたときのメリットを「税金」、「信用・助成金」、「経費」の視点から挙げています。
そもそも、会社を設立するということは、会社という「法人格」を世に新たに送り出すことになります。自然人である人とは、別人格であるため、様々な恩恵が得られるようになります。
1. 税 金
個人事業主は、売上から必要経費を差し引いた残り全部が自分の「所得」です。一方、会社になると、「会社のオーナーである自分が、社長である自分に給料を支払う」という特殊な形になります。この「役員報酬」と呼ばれる給料のみが、社長個人の「所得」になります。
このように、個人と会社をまったく別物と扱うために、個人と会社では、税金の計算方法に決定的な違いが出てきます。
一般的には、次の5つが、法人成りしたときの税金面のメリットです。
1.自分の税金が安くなる
役員報酬の給与所得控除額の分、税金が安くなる。
<給与所得控除の節税効果>
個人事業主 | 会 社 | 会社の社長 | 差 額 | |
売 上 | 1,000万円 | 1,000万円 | 0 | |
自分に給料 | 600万円 | 600万円 | 0 | |
その他経費 | 400万円 | 400万円 | 0 | |
給与所得金額 | 174万円 | 174万円 | ||
所得金額合計 | 600万円 | 0 | 426万円 | -174万円 |
所得税(法人税) | 約70万円 | 0 | 約35万円 | -約174万円 |
住民税 | 約57万円 | 7万円 | 約40万円 | -約10万円 |
事業税 | 約16万円 | 0 | -約16万円 | |
法人成りした場合の所得税などのメリット金額 → | -約61万円 |
*売上1,000万円を上げた事業で、経費が400万円かかったケースを、個人事業主の場合と会社にした場合に分けた事例です。
<個人事業主と法人成りした場合の税金の違い>
年 収 | 個人事業主 (所得税+住民税+個人事業税) | 会社+会社の社長 (所得税+住民税+法人住民税) | 差額(節税効果) |
400万円 | 約73万円 | 約44万円 | → 約29万円お得! |
600万円 | 約143万円 | 約82万円 | → 約61万円お得! |
800万円 | 約215万円 | 約134万円 | → 約81万円お得! |
1,000万円 | 約297万円 | 約189万円 | → 約108万円お得! |
1,200万円 | 約393万円 | 約255万円 | → 約138万円お得! |
1,500万円 | 約537万円 | 約377万円 | → 約160万円お得! |
2.家族2人の税金が安くなる
家族に給料を分散することで、安い税率を適用できる。
3.配偶者控除が認められる
配偶者や扶養親族に給料を支払っても、一定額以下の給料であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となる。
4.消費税が免除される
法人成りには、消費税に関連して大きなメリットがあります。それは、消費税の免除です。
消費税は、基準期間の課税売上高が1,000万円未満であれば、課税事業者とならなくてよいという特例があり、消費者から預かった消費税があってもその納税が免除されます。
この基準期間は、前々事業年度とされていますので、そもそも設立第1期と第2期については、前々事業年度という基準となる期間が存在しません。つまり、会社の場合、「資本金の額が1,000万円未満であれば、第1期と第2期の消費税を免除する」ことになります。
仮に、法人成りの前の個人事業主としての売上が1,000万円を超えていたとしても大丈夫です。
5.赤字の繰越期間が7年に
事業が赤字のときに、次期以降の黒字と相殺できる期間が7年間に拡大される。
1.信用が得られる
会社にすることで、一番大きい間接的なメリットは、「信用」です。商売は「信用」を得るところから始まります。お客さんは相手を信用することがなければ、大切なお金を払ってくれません。
信用される手段の一つとして、「会社」という組織は役立ちます。一般的に個人事業主よりも会社の方が信用を得られます。
なぜ、「会社」の方が信用されるのでしょうか?
その答えの一つは、「登記」されているからです。「登記」されていれば、誰もが会社の重要事項をいつでも閲覧できますし、居場所が分からないこともありません。誰が、責任者で、どういった商売をしているのかが登記事項を見れば一目瞭然だから信用が得られるのです。
また、大手企業などの中には、個人事業主とは取引しないケースがあります。たとえ、これまでにいい仕事をした実績があっても、「上司を説得できない」「今までに実例がない」といった理由で断られた例はよく聞きます。大きな会社は、どうしても保守的になりがちです。リスクを取ることを嫌がる傾向にあります。
2.個人資産が差し押さえられない
日々の経営では、仕入費用や外注費、従業員への給料や借り入れの返済など、さまざまな支払いの義務が生じます。
個人事業主の場合、商売もプライベートも一緒なので、上記の支払いは法的には同じくくりです。
しかし、法人成りして会社を作った場合、商品の支払いや借入金などは、会社が支払うべきものになります。そのため、万が一支払いが滞ってもそれは会社の責任であり、役員個人にその責任は及びません。仮に、会社が破産などになっても、形式的には、個人に返済義務はありません。つまり、会社を作った方が、その責任は軽くなるのです。
3.資金調達が楽になる
個人事業主の場合、青色申告で満額の控除を受けない限り、「貸借対照表」の添付は免除されています。そのため、貸借対照表という言葉に耳慣れない方もいるでしょう。
金融機関から借入れを行う場合、「この会社が今年いくら儲かっているか?」よりも「この会社はあとどれくらいの余力が残っているか?」を注意深くされています。その観察の際に、会社が作成する貸借対照表があるわけです。
しかし、残念ながら個人事業主の場合、作成しているところは多くありません。そのため、同じ財政状態の会社と個人があった場合に差が出ます。貸借対照表を作成している会社の方が信用をおけるため、融資を受けやすいというのが現状です。
4.助成金の幅が広がる
助成金は、基本的には個人事業主も会社も利用できます。特に、雇用に関しては、個人・会社のどちらでも利用できるものが多いです。
しかし、場合によっては、社会保険に加入していないと利用できない助成金があります。
個人事業主の社会保険は、5名未満の従業員を雇っているところは任意加入であり、強制加入ではありません。しかし、法人成りすると、社会保険は強制加入になります。ですから、会社の場合は助成金の幅が広がると言えます。
下記のアドレスは、厚生労働省や経済産業省などのサイトですので、ご参考ください。
3.経費
まず、ポイントとして、個人ではグレーゾーンで認められなかった経費も、法人化した後は、会社の損金か否か、つまり0か100かの税務判断になります。
会社が所得を得るために使ったお金を、会計上「経費」と呼び、その中で法人税の計算上差し引くことのできる経費を法人税法上「損金」といいます。
基本的には、個人だろうが会社だろうが、事業を遂行するときには、どうしても必要なコストは課税の計算上差し引くことができます。
しかし、個人と会社の経済活動を考えた場合、決定的な違いがあります。
会社の活動は、常に株主の利益を得ることを目的としたものであり、それ以外の活動は理論的にはありません。そのため、会社の経費は原則として、すべて事業活動のために支出されたものと見ることができます。
これに対して、個人の場合は、プライベートな部分と事業活動の部分の区別が難しい場合があります。そこで、所得税では、さまざまな個人の支出の中から事業に必要な経費だけを区別して、所得を計算することになります。
ただし、個人の場合、厄介なのは、税務調査のときに経費とプライベートとの区分計算がそのまま認められないことも起こりうるということです。個人事業主に税務調査が入った場合に所得が思ったより多くなってしまうケースが出てきてしまうこともあります。
会社は、既述のようにすべての取引が事業関連のものという前提がありますので、経費の範囲が自然と広がってきます。上手に活用したいものです。
法人成りしたときの経費のメリット
① 家賃・・・・・・・・・・・・・住居を役員社宅扱いにできる
② 出張手当、慶弔費・・・社内規定をしっかり作れば経費が増える
③ 車・・・・・・・・・・・・・・・車などの資産が全額経費になる
④ 生命保険・・・・・・・・・・条件を満たせば、生命保険が経費になる
⑤ 退職金・・・・・・・・・・・・退職金が経費になる