中小建設業の経営戦略のポイント |
中小企業は大企業に比べ、一般的に資金力・人材・規模・計画性は劣ります。
しかし、小規模であるがゆえに機動性や小回りが優れていることも多く、またシンプルな組織体制のため意志決定が早い等の利点があります。
他に、中小企業の特徴として、社長の決定権が強いため(特にワンマン社長の場合)社長の判断に左右されやすい点があります。
それでも、経営がうまく行っている場合は何の問題もありません。
しかし、いったんうまく行かなくなってくると、途端に負のスパイラルに陥り、すべてが悪い方向に流れていくこともあると思います。
後になって分析・検討してみると、すべてが悪いわけではなかったことに気付きますが、悪いときはなぜか冷静に考えられないことが多い気がします。
そこで、中小建設業の経営ポイントとして重要と思われるものを次に5つあげてみました。
悪い流れにあるときこそ、冷静に現状を把握し、慎重に経営方針を固めていっていただければと思います。
① 経営理念の確立・徹底化
② 年度計画や中長期計画の確立
③ 資金繰りの強化 (財務の安定化)
④ 営業の強化
⑤ 生産体制の合理化
上記の5つのポイントを実現するためには、企業トップである社長の考え方や姿勢にかかってきます。
社長の考え方や意識をおろそかにして、部下に「やる気」や「実績」を求めても良い結果は得られません。
社長自らが率先してリーダーシップを発揮していくことが、中小建設業の経営を安定化させる原動力となるのです。
このことを意識したうえで、5つのポイントを実行していくことが重要となります。
① 経営理念の確立・徹底化 |
経営に携わっていると、どうしても目先のことばかり考えてしまい、自社の損得や競合他社のことが気になったりしがちです。
しかし、右肩上がりの時代は過ぎていますので、過去の延長での経営やテクニックでは経営を簡単に乗り切れません。
そこで、自社の社会的存在の必要性を確立し、建設業という仕事を通して社会に貢献していくためには何をすべきかを明確にすべきです。
すなわち、「経営理念の確立」です。
特に、経済が成熟し、供給過剰時代の現在、社長を筆頭に全社あげて経営理念を理解し、実行していくことが重要となります。
② 年度計画や中長期計画の確立 |
「計画なくして経営なし」と言われるように、これからどの方向に向かうのかを明確にしなければ道に迷うことになります。
計画には、向こう1年間の年度計画と、3~5年先を見通した中期計画、10年くらいの長期計画があります。
将来が見通せない時代だけに、シッカリとした計画を立て、計画を達成できるような具体的な方策を講じていくことが必要になってきます。
③ 資金繰りの強化 |
建設投資の大幅減少により、中小建設業の中には資金繰りに苦労している会社が少なくありません。
中小建設業の日常の悩みの中で最も大きいのは、「お金の問題」と「人の問題」といっても過言ではないと思います。
資金繰りの悩みを解決するには中長期的な財務計画の中で検討する必要があり、単に収入・支出といったお金の出し入れだけでなく、売掛金の回収や未収金などバランスシートの中身の検討も必要です。
④ 営業の強化 |
中小建設業の経営は、技術力・経営能力・生産体制の強化および合理化・財務力の強化・情報システムの活用など多岐にわたりますが、特に中小企業では「営業力の強化」をあげることができます。
今までは入札参加や下請けなど「待ちの営業」でもそれなりの成果を上げることができましたが、今後は「積極的な営業力」という攻めの考え方や行動が重要になってきますので、新たなターゲット等を定めて計画的に行動することが必要になってきます。
⑤ 生産体制の強化 |
営業力の強化と合わせて重要なのは「利益を確保できる体制づくり」です。
建設業における利益は総利益であり、原価管理が重要な要素となります。具体的には現場のコストダウンや原材料の購入費圧縮、外注費の見直しなどがあげられます。
現場に携わる技術者や管理担当者だけでなく、全社挙げてコストダウンに取り組む姿勢が大切になります。