建設業の資金繰りのポイント (倒産しないために) |
1.資金不足の危機に見舞われる原因を減らす
(1) 銀行の融資が引き続き受けられるか?
銀行は取引先の与信管理を常に行っていて、取引先の経営状況が悪化したようなときには新たな融資をしてくれません。
銀行の債務者区分は下記の5つに分けられています。
① 正常先
② 要注意先
③ 要管理先
④ 破綻懸念先
⑤ 実質破綻先・破綻先
会社が連続赤字決算で実質債務超過であるときは、要管理先以下の不良債権として扱われる可能性が高くなり、このようなときはメイン銀行であっても手形借入の書換えに応じてくれなくなります。
自社の債務者区分・自社の借入れ余力を日頃から把握しておくことが大切です。
(2) 売上代金の貸倒れの危険性はないか?
貸倒れの被害にあって連鎖倒産となるケースも少なくありません。大口の売掛先については、事前に信用調査(少なくともその会社の噂や評判くらいは調べましょう)を行っておくべきです。
決算書などを入手できないときでも、以下のような兆候の有無を調べることによって貸倒れの危険性をある程度察知できるでしょう。
① 最近、幹部社員の退職が続いている
② 主要な仕入先や外注先が最近変わった
③ 社長が最近不在がちである
④ 最近、安売りしている噂がある
⑤ 支払いを現金から手形に、あるいは手形のサイトを延ばしてきた
(3) 融通手形又は保証被りの危険な罠に近づかない
融通手形を切り合っている場合、先方が不渡りを出すと、すでに割り引いていた手形の買戻し金額と自己が振り出した手形の決済の二重の資金支出となります。また、融通手形を切り合うこと自体が会社の信用を著しく傷つけますので、融通手形にはできるかぎり手をださないようにしましょう。
また、「絶対に迷惑をかけないから」と保証人・連帯保証人に立つことを頼まれたときも心を鬼にして断りましょう。連帯保証人・保証人になるということは、自分がお金を借りたことと同じことです。「親の遺言だから」「妻の承諾がいる」などと言うと、カドが立ちにくいでしょう。
2.管理を徹底して資金繰りの破綻を回避する
(1) 工事ごとの収支のバランスを図る
工事着手金・中間金・変更工事の追加工事代等は適時に確実に回収するようにしましょう。
そのためには、施主や元請から集金する担当者と工事代の支払いを担当する現場責任者の間の緊密な情報交換やホウレンソウ(報告・連絡・相談)が欠かせません。
(2) 事務体制を整備する
事務体制の整備状況のチェックポイント | YES | NO |
① 今の経理担当者が辞めても資金繰り管理は大丈夫? | ||
② 2ヶ月先までの資金繰りの目途は立っている | ||
③ 求めたら担当者からすぐに必要な資料が出てくる | ||
④ 予定外の工事の請求書が遅れて出てくることはない | ||
⑤ 経理の事務処理の手順書が作られている | ||
⑥ 資料や帳簿の保管場所はきちんと決められている | ||
⑦ 毎月10日までに試算表が出来上がり、社長は説明を受けている | ||
⑧ 銀行印や会社実印は社長が責任をもって管理している | ||
⑨ 手形用紙や通帳は印鑑とは別に適切に保管されている | ||
⑩ 現金残高は現金出納帳残高と合致している |
(3) 収支のタイミングをもう一度見直す
入金日の直前に給料日だったりすれば、給料の支払日を1週間ずらすだけで資金繰りが大いに楽になります。また、手形の決済日を月のうちに何回も分けているとその都度資金繰りに神経を使うことになりますので、決済日は多くとも2回くらいにまとめるようにしましょう。
【 資金繰りを良くするための基本 】
投資キャッシュ・フロー及び財務キャッシュ・フローの改善といっても、「利益」を出すことを抜きに資金繰りの根本的な改善はありません。
また、中小企業では会社と代表取締役社長の財布は表裏一体です。社長個人の生活を質実にして、万一の事態にそなえて社長個人としても蓄財することが社長の努めであり、責任と言えます。